端午の節句 初節句

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4月30日(火)『中日新聞』25面に、節句祝いと女性参加についての記事が載りました。

(写真は削除してあります。掲載の都合上記事の配置を編集しております。)
端午の節句 初節句


 この記事、読みにくいなァと思うのです。

 なぜか?

 女性の参加問題と、初祝いの話をごちゃまぜにしているから。


 まずはじめに。
 「初子」などという言葉が、さも昔から存在しているかのように書かれていますが、当ブログで何度か指摘しているように、この言葉じたい新聞などマスコミによる造語ではないかと考えています。

 「初は何軒ある?」というセリフは聞いても「初子は何人だ?」などという言い回しは、少くとも1990年頃までは聞きませんでした。


 初節句は長男が生まれた家のお祝い。
 特に昔は、長男と言えば「家産の継承者」であり「家業の継承者」でありましたから、「やや資産家以上」の初節句となれば、それはもう、お祝いに行くその組も力が入ったことでしょうよ。

 家としても見栄の張り合い。


 初節句の「節句」というのは、この場合「端午の節句」ですから、長男が誕生した家。
 通称「桃の節句」(上巳の節句)は長女が誕生した家のお祝い。


 とまぁ、近世後期頃からだろうと思いますが、伝統的に3月と5月とで女児誕生と男児誕生の色分けがなされており、私らの年代(わたしゃ1974年生れ)やその10年くらい下の世代までは、初を出すのは「長男誕生時」と決まっていましたね。


 だから、「オレ次男だから初はやってない」と、こういう会話にもなるのも当たり前でした。

 そもそも「生まれた子のお祝い」とうよりも、「長男が誕生した家のお祝い」という感じだったのだろうと思います。



 これが、いつもまにやら、子供の誕生祝いに変わっていきました。

 それだけ祭を知らない人々が増え、「常識」が通用しなくなったということですね。

 大体、新聞記事の書き手は凧揚祭の内部の人間ではないでしょうから、昔から事情に明るくない。

 そもそも、祭などは「民俗行事」と言われるだけあって、文字文化の外側に存在するもの。祭を文字によって記述するということ自体、なされてきませんでした。

 で、ここからは推測ですが、初は家のお祝いだという認識を深く持っていない記者さんが、その姿、生まれて1年に満たない赤ん坊に法被を着せて肩車している姿を見て、「そうか!生まれたその子を祝っているんだ!」と勘違い。

 初凧に初練り、その対象になっている子だから「初子」だ!と、誤解から言葉を発明してしまったのでは?

 あげく、「初子凧」などという言葉もこの数年の間に発明されました。

 凧を作っている凧屋さんが「初凧」とは言っても「初子凧」などとは言いませんからね。

 

 伊場町(東伊場)は今でも「長男のみ」としているということですが、端午の節句の初祝いとは本来そういうモンです。


 私もそれが長らく「常識」だと思っていたら、既に少数派。私の知る限り、女の子の「初凧」に積極的でないのは、伊場町以外では、馬込町・新町・松江町くらい。

 「長男が基本」と明言しているのはもはや伊場町だけかも。ガンバレ伊場町!。


 「少子化で長男だけで初を確保するのが難しく」と書いていますが、世帯あたりの子供の数が減っているのを「少子化」と呼ぶとすると、それは「初」の減少の理由にはなりません。

 男の子が3人いようと、初は長男のみなんだから。


 昔の方がよほど初凧の注文は少なく、家紋と名前のない喧嘩凧(町内凧)の方が多かったとのこと。



              (善)



 と。

 この書き込みを最後に、明日から前夜祭に突入。

 今年も色々な問題を抱えつつ、それでも祖父母の代より前から続くこの祭を子や孫の代より後の時代まで、できるだけ変わらぬ姿で続けていけるよう試行錯誤しながら、実践してみようかと、このように思うのであります。



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この記事へのコメント
>「長男が誕生した家のお祝い」

私も同じ理解をしています。しかし、「初や」とは言いません。

昨日も某所で「初や」とおっしゃている組がいくつもありましたが、私は「初や」という言葉は地方の方言ではないかとという気がしてきました。


>記者さんが~(中略)~勘違い。

記者さんも頻繁に転勤があるようなので、仕方ない部分もありますが、当町に関する記事でも勘違いがありました。

「当日はお施主さんに失礼のないように粛々とやるのみ」と発言したものを「当日は初子さんに失礼のないように粛々とやるのみ」と記載されてしまいました。


せっかく記事に取り上げてもらっても、間違った伝えられ方になってしまっては元も子もありません。


「祝ってもらえるのは長男だけなのか?」なんていうクエスチョンもありましたね。本当に常識が通じなくなった感があります。


落ち着いたら今年の各記事を持ち寄って深堀りしてみませんか?記者さんへの理解活動も必要だと感じています。
という事で、記事のスクラップをみんなでやりましょう。
Posted by NAVA@八まん連NAVA@八まん連 at 2013年05月02日 13:04
ラジオのような生放送であれば誤解はないのですが(笑)
http://hachimanren.hamazo.tv/e4444459.html
先日の放送内容です。
Posted by NAVA@八まん連NAVA@八まん連 at 2013年05月02日 13:25
「はつや」ばかりか「はつけ」もあるよ。


 なんか前者は「もつ屋」みないな響きあり。後者は「発毛」のごとき響きが。


 ただ、民俗調査で、水窪の方だったか、やはり初節句を迎えた家のことは「ハツ」と呼称しているとの報告が有りましたよ。

 「初家」(はつや・はつけ)とも、ここ20年の造語だと思います。

 いずれにしても調査する必要はありそうですね。
Posted by 善善 at 2013年05月10日 01:47
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