北寺島町屋台
2003年5月、naka2氏撮影。
龍のような彫刻。
迫力のある構図ですね。
御簾脇(みすわき、正面左右の彫刻)と、上部の蟇股(かえるまた)というか揚虹梁(あげごうりょう)というか、3つ部位でひとつの「絵」を作っております。
背景の雲の間に降り注ぐ稲光が、全体の迫力を演出してます。
こりゃ八岐大蛇(ヤマタノオロチ)なのだそうです。
だいぶ前に、
「龍と大蛇(オロチ)とどう違うの?」
と、その筋の方にお伺いしたら、
「彫刻としては同じだけどさ、題材とか周囲の描写によって見分けるの」
というのですね。
で、よくみると、右下には剣を突き上げている勇ましい人物。
左下には、ご婦人。
日本神話の有名なシーン。
須佐之男命(スサノオノミコト)が八岐大蛇(ヤマタノオロチ)と対決しているところ。
「大蛇退治(オロチたいじ)」ですね。
つまり、左下のご婦人は、櫛名田姫(クシナダヒメ)。
暴れてしょんない頭が八つある怪物(八岐大蛇)を鎮めるために、ムスメを生贄に差し出そうとしていたところ、訪ねてきたスサノオ君が、「オレが助けてやるからヨメになれ」だって。
生贄にされるか、オレのヨメになるか。
こりゃ究極の選択というか、非人道的な話ですが。(どっちもやだね。)
スサノオ君は、酒の入った瓶(カメ)を八つ用意させて、大蛇の八つのアタマが酒をグビグビ。
ぐでんぐでんになっていたところ、スサノオ君が剣でアタマを切り落として退治。
めでたしめでたし。
これならスサノオ君でなくても勝てそうな気もしますが。
ところで。
龍に見えても文脈で「オロチ」と理解するもの、というわけです。
そこでよく見ると。
左端に、二つ目のアタマが見えていました。
あとの六つは、このシーンには収まりきらなかった、と考えましょう。
私も知っていたくらいで、この「スサノオのオロチ退治」は日本神話の中でもメジャーなお話。
いくつかの屋台に時折見かけます。
ほかの屋台には、龍のアタマの近くに、瓶がいくつか描かれている、という構図の彫刻もありますね。
それはまた別の機会に。
(善)
北寺島町屋台。
1962年(昭和37年)。彫刻:早瀬利三郎、志村流張。
関連記事